海の向こうでは

鈴原トウジ「実は、あれから碇君がずっと休んでらっしゃるので、気になって見によらせてもらったんですが・・・」

葛城ミサト「シンジ君はね、今、ネルフの訓練施設にいるの」
鈴原トウジ「ああ、そうですか・・・」
相田ケンスケ「あ、これ、机にたまってたプリント。碇君に」
葛城ミサト「わざわざ悪いわねえ、ありがと」
鈴原トウジ「ほな、僕ら失礼します」
相田ケンスケ「碇君に、よろしくお伝えください」

葛城ミサト「ええ、伝えるわ！じゃっ」



相田ケンスケ「これは予想外の展開だ」
鈴原トウジ「えらいべっぴんさんやったなあ」



葛城ミサト「シンジのバカ！」



1,海外の反応
初視聴(字幕)

シンジの心のサインが、彼の家出が見つかったこととすごく対照的になっている。ミサトは玄関を開ける時に「シンジくん！」と叫んだにも関わらず、トウジたちに嘘をついた。彼女は人前で元気に振る舞うのがとても得意みたいだけど、この時はシンジのことをとても心配していたみたいだ。この時の彼女は”間抜け”に見えたけど。

彼が環状線に乗っているなんて皮肉が効いているね。彼は逃げ出したが、それは無意味だ。彼は戻ってくるしかない。彼は同じテープを何度も何度も繰り返し聴いている。彼は映画館に立ち寄った、映画の内容はセカンドインパクトとそれによる大災害を描いたもののようだ。観客はほとんど寝ていたが、彼に前のほうに座っていたカップルはいちゃついていた。彼は後者のほうに強く興味を惹かれたようだ...

あのシンジの「はい」という返事はよく知られている。自分より力のある人間に対して受け応えしなきゃいけない時に出るやつだ。完全に白旗を上げているように見せかけた一種の反抗だね。

相田(彼の名前で合ってるはず)は戦争ごっこをして遊んでいたね。彼がつい先日、大きな作戦を台無ししてしまったことを考えると皮肉に思えてくる。

レイのカットは興味深かった。彼女はシンジとは違うみたいだ。彼女は熱意を持っておらず、すべて順調にいっているとそう思っているように感じる。傍記：誰かミサトがリツコと会話する時の声をASMRっぽくしたものを持ってないか？あの声最高だ。

相田は自分が望んでいることを理解していないようだ。彼がそれを学ばないことを願っている。

あれはほとんど逮捕だな。それとNERVのロゴの下に書いてる文章が興味深かった。”God is in His heaven. . . ”残りの文はロバート・ブラウニングの詩の通りなら”All’s right with the world!”だけど、詳しくは読めなかった。今のところ、この言葉の指し示す意味はさっぱり分からない。

シンジとミサトのショットはすごかった。シンジは暗闇の中にあり、ミサトの顔は明るい光によって隠されている。そして彼女はついに乗りたくないのなら出て行きなさいと言い放った。彼は義務感あるいは必要に駆られてエヴァに乗っているだけだ。彼女は彼自身の意志で選択してほしいと願っている。さもなければ、トラブルを招くだけだ。作戦でも、ミサトにとってもトラブルになる...

ミサトに別れを告げることもできないとは残酷だな。

トウジは馬鹿だけどいい奴だな。シンジのパンチは２人のわだかまりを吹き飛ばしたようだ。しかし、彼らはなぜシンジがここに来ると分かったのだろう。

ミサトはハリネズミのジレンマとシンジのことについて話していた。彼女がシンジについて話しをしていた時、一瞬、ミサトのように見えるシンジの顔を映るのが面白いね。彼女は認めようとしないだろうけど、あれは彼女自身のことも説明していたと思うよ。彼女はシンジを気に掛け、そのせいで傷を負ってしまった。

長い１カットからの”ただいま”。素晴らしいカットだった。彼はここを去ることで感じた自分の弱さに対処し切ることができず、去るのを止めた。シンジがついに自分の運命を受け入れ始めたようだけど、まだまだその道のりは長い。

ネタバレはされたくないけど、これからどうなっていくのかがすごく気になるよ。第４話の段階でミサトは超一流のベストガールだからね。他のキャラクターたちとも嫁戦争(waifu wars)は一体どうなるんだ？！彼女たちに会うのがとても楽しみ。
ーーFirst-Time Watcher (Sub)








2,海外の反応
>>彼に前のほうに座っていたカップルはいちゃついていた。彼は後者のほうに強く興味を惹かれたようだ...

シンジが映画館でいちゃつくカップルを眺めているシーンは何度見てもすごく惹き付けられる。彼の視線を一点を見つめ、表情は固まっていた。一体何を考えているのか、とても曖昧だ。嫉妬しているのか？変な気分になってるのか？孤独を感じてるのか、それとも自分とは全く異質なものを見ている気分なのか

>>そして彼女はついに乗りたくないのなら出て行きなさいと言い放った。彼は義務感あるいは必要に駆られてエヴァに乗っているだけだ。彼女は彼自身の意志で選択してほしいと願っている。さもなければ、トラブルを招くだけだ。作戦でも、ミサトにとってもトラブルになる...

ミサトの言い分は、すこし信頼感を損ねるようなものに感じたね。おそらくそれは彼のために言っているんだろうけど、彼のレイを助けるためにエヴァに乗るという理屈もそれなりに筋が通ってると思う。どうしてエヴァのパイロットがエヴァに乗りたいと望んでいることがそんなに重要なんだ？

ミサトは矛盾した２つのことをやらせようとしているんじゃないかな。彼女はシンジにロボットに乗ってもらう必要がある、だけど彼女は彼に自分からロボットに乗って欲しい、そして、彼女は彼を無理やり乗せるつもりはない。

彼女この問題の解決については、ほとんど絶望の様相を呈していた。彼女にシンジの扱い方が分からないのと同じように。ミサトは誰かを気に掛ける大人としての役割に嫌気が差している。ある種の母性本能のメカニズムのようなものに従った不条理な可愛がりは、彼女にとっても良くない。
ーーThat scene where Shinji is watching the couple getting frisky in the cinema has always stood out to me. The way his gaze focuses and expression tightens - it's just perfectly ambiguous what he's thinking about. Is he envious? Is he weirded out? Is he lonely or its something completely foreign to him




3,海外の反応
>>ミサトは矛盾した２つのことをやらせようとしているんじゃないかな。彼女はシンジにロボットに乗ってもらう必要がある、だけど彼女は彼に自分からロボットに乗って欲しい、そして、彼女は彼を無理やり乗せるつもりはない。

ミサトは、もし可能なのであれば、シンジにはベストな選択(全てから逃げ出す)をしてほしいと思っている。しかし、シンジを巡る彼女の優先事項は全て対立し合っている。

シンジに責任を押し付けて自分から離れさせることで、自身の内部コンフリクトを解決しようとする彼女の人格が、彼にここから去るように言っているのだと思う。そうすることで、ミサトたちは２人ともただ惨めに仕事をして命令に従うのではなく、シンジの選択にミサトが反応したという形になる。

彼女がシンジに自分の人生を乗り越える力を与えたいだけなのか、この問題の解決策を探しているだけなのか、あるいはその両方か、それは分からない。
ーーShe also wants him to do what's best for him (run away from all of this), if possible. All her priorities around Shinji are in conflict with each other.
















4,海外の反応
再視聴

今回の再視聴には数日乗り遅れたけど、今追いついたよ。以前に字幕版を観てるから、今回は(新しいほうの)字幕版を観る。

いくつか思ったことを書いていく：

・シンジの部屋には、シンジちゃんの部屋と書かれていた。あれはシンジが大人しくて時に役立たずになることを故意に強調してるのだろうか？

・ミサトはトウジと相田に、何も問題を抱えていないように装ったが、その後すぐに彼女はフラストレーションを露わにした。彼女の外交的で明るい性格ととても一致しているが、同時に内向的な問題を抱えたキャラクターだ。

・あの電車のシーン。シンジは１人、ずっと孤独で、頭をもたげ、人々は乗り降りし、ついに彼以外の乗客はいなくなり、最後にはたった一人残されてしまった。なにか見覚えがないか？

・そして彼は、知っている通り、一人で映画館へ向かった。いちゃつくカップルを眺める彼は顔は幸せそうでもなく、悲しげでもなく、そこからは何の感情も読み取れない。ただ興味を惹かれ、困惑さえ感じながら、自分と全くかけ離れた人間を見つめていた。

・あのシーンのサウンド、照明、カメラの動きに至るまですべてがシンジの内部の混乱をとてもよく表現していた。全体的にかなり不安感を感じるシーンだった。

・シンジはこのシーンで、無感動(apathy)と宿命論(fatalism)、そして捩れた”義務感”の組み合わさったものを示していた。そしてミサトは逃避した彼に対して複雑な感情を抱いているのが分かる。

・シンジが連れ戻されたシーンは「行方不明の子供を見つけた」という感じではなく「脱走者を捕捉した」という感じだった

・シンジが暗闇の中で座っていたあのカットがとても好きだ。彼とミサトの隔たりを明確に表現していた(ミサトは影だけだったけど)

・あの気持ちの良いパンチのシーンの後で、シンジはおそらく彼がもっとも得意とすること、自己嫌悪を発動させた。すべて自分のせいだ。(もう一度)殴られないといけないのが自分のほうだと。

・お前らのために最後あたりの４８秒間のシーンのGIFを作ってやったぞ、楽しんでくれ

ーーRewatcher註：reinforce =「強化する、補強する」、meek =「大人しい、素直、神妙」, turmoil =「混乱、騒ぎ、不安、動揺」, apathy =「無感動、無関心」, fatalism =「運命論、宿命論」










相田ケンスケ「っ！」

ＮＥＲＶ保安諜報部員「碇、シンジ君だね」
碇シンジ「はい」
ＮＥＲＶ保安諜報部員「ネルフ保安諜報部の者だ。保安条例第八項の適用により、君を本部まで連行する。いいね？」
碇シンジ「はい」



5,海外の反応
ところで、鈴原トウジと相田ケンスケだ。トウジは名前で相田は姓だよ。ーーIt's Toji Suzuhara and Kensuke Aida btw - Toji is a first name Aida is a last name.




6,海外の反応
>>お前らのために最後あたりの４８秒間のシーンのGIFを作ってやったぞ、楽しんでくれ

You. I like you.




7,海外の反応
>>お前らのために最後あたりの４８秒間のシーンのGIFを作ってやったぞ、楽しんでくれ

このGIFのことがありえないくらい好きだーーI can't believe I fell for that




8,海外の反応
>>シンジが連れ戻されたシーンは「行方不明の子供を見つけた」という感じではなく「脱走者を捕捉した」という感じだった

ああ、その通りだな。彼らがシンジを殴ったり彼を処分せず、本当にただ連れ帰っただけだったのにはとても驚いた。
ーーYeah, very much so. So much so that I was surprised they just took Shinji back and didn't beat the crap out of him or "disappear" him.




9,海外の反応
ああ、彼らはただ家に連れ帰すにしてはあまりに厳つく、鋳型にはめたような個性のない顔をしていた... そして、まるで幽霊のように朝靄の中から現れた。もしくは、大きなものの裏に潜んでいた影がシンジを捕まえにきたようだった。
ーーYeah they really hammered the harsh facelessness visuals home with the agends..The way they emerge from the morning fog like ghosts. or how he is captured in shadow, dwarfed by that imposing logo.




10,海外の反応
例の最後のシーンはこのアニメ全体においても一番好きなシーンだよ。GIFがなかったのは少し残念だ。
ーーThat last scene is actually my favourite scene in this whole anime. I'm kinda disappointed there's no gif.




11,海外の反応
『涼宮ハルヒの憂鬱』で長門がラジオと人々の声をバックに部室で座っているカットを思い出した。これがすぐに頭に浮かんだよ。
ーーIt reminded me of the scene in haruhi where it's a still shot of Nagato in the club room with the radio and people talking in the background. Tho I suppose this came first.




12,海外の反応

この意見には反論しておきたいな、シンジは苛立った表情をしていた。そして、彼は外のソファに横たわった(これはカップルを見たからそうしたことを示唆している)。あのカップルが彼に孤独感を思い出させたのは明白だ。
ーーIt's just an endearing way for Misato to refer to him, I'm pretty sure.
I have to disagree, with the annoyed expression he makes then immediate cut afterwards to him laying on a couch outside (implying he did so because of watching them) it's pretty clear that seeing them reminds him of his own loneliness.








葛城ミサト「乗りたくないの？」
碇シンジ「そりゃそうでしょ。第一僕には向いてませんよ、そういうの。だけど、綾波やミサトさんやリツコさ・・」
葛城ミサト「いい加減にしなさいよ！」

葛城ミサト「人のことなんか関係ないでしょ！？嫌ならここから出て行きなさい。ＥＶＡや私たちのことは全部忘れて、元の生活に戻りなさい！・・・っ！あんたみたいな気持ちで乗られるの、迷惑よ！」




13,海外の反応
初視聴者がまたまたまたまた戻ってきたぞ

ＯＰが本当に美しい。ネタバレもなく(少なくともオレの知る限り)、曲も映像も素晴らしい。マジで大好きだ、今回の再視聴中、オレはずっとこのＯＰを絶賛し続けるつもりだ。

寝癖のついたミサトもまた可愛いかった！

シンジは学校をズル休みしているのか。どうして前回このことに気付かなかったのだろうか。彼が家出したことは心配するな。オレはきっと戻って来ると信じてる。

それと昨日、オレは間違ってトウジの声優をブライス・パペンブルックと言ってしまったけど、実際にはジョニー・ヨング・ボッシュだと気付いたよ。オレは『ダンガンロンパ』のメインキャラと勘違いしていたようだ。それはさておき、トウジと相田がシンジの鞄を届けに見送りに来てくれたことが本当にうれしいよ。彼には友達ができたようだ。それと「えらいべっぴんさんやったなぁ」オレもそう思うぜトウジ...

シンジはしばらく電車に乗っていた。こんなに長く座っていたら、背中が痛くなってしまうに違いない。可哀想に、シンジはかなり病んでいるようだ。

シンジは映画館で何かに(性的なものに？)目覚めたようだった。奇妙なシーンだった。

彼はうるさいセミの鳴き声に悩まされつづけ、あのシーンでは色使いとノイズの不協和音が何度も使われていた。同じ色のさまざまな色合いが使われていたあのシーンが大好きだ。

シンジの小さな頭の中でさまざまのものが行き交い、我々はかろうじて上辺を撫でたように感じる。彼のトラウマが明らかになるのがとても楽しみだ。

もしシンジの心がこんなに乱されていなければ、彼はきっと相田を似たような少年だったんだろう。オレはシンジのことは好きだけど、何か避けられない困難に直面した時には、常に顔を上げて堂々としていてほしいと思う。

ミサトがブチ切れた。このフラストレーションは理解できる。しかしオレは同時にシンジのことも理解できる、彼に尋ねなければならないことが沢山ある。この作品はそれぞれの視点からキャラクターたちのことを視聴者に理解させる素晴らしい仕事をしているね。

殴れシンジ、これでお相子だ！Hahaha、だけど、思ったより強めに殴ったな。

シンジがすごく気の毒に思うよ。彼は自分の欠点を知っているけども、それを直す方法を知らない。彼がそれを直すことができるかどうかは分からない。「このロボットに乗れシンジ」とは言えないし、自分が同じ立場でも乗るか分からない。シンジはたまに泣き言をいうけど、その気持ちも理解できる。

あのミサトの視線をシンジから遮った電車のシーンは良いフェイクアウトだったね。そして、彼らはとても長い時間お互いを見つめ合っていた。少なくともあの瞬間、あの場所が自分の”家(home)”であるとシンジが気付いてくれたのがうれしい。ミサトは少し思いやりに欠けるように見えるかもしれないけど、オレにはシンジのことを他の誰よりも心配しているように思えるよ。

シンジは明らかに回復している、もしくは少なくとも自分が気に掛ける人々のためにエヴァのパイロットを続けてもいいと思っている。彼の３人の友人が、上司である３０歳の綺麗なお姉さんと、自分の顔を(二度も)殴った奴、そして、兵士ごっこを楽しんでいる奴というのがちょっと面白いね。興味深いメンバーだと思うけど、今のところ全てのキャラクターのことを気にいってるよ。
ーーFirst Timer back for the fourth time



14,海外の反応
>>ＯＰが本当に美しい。ネタバレもなく(少なくともオレの知る限り)、曲も映像も素晴らしい。マジで大好きだ、今回の再視聴中、オレはずっとこのＯＰを絶賛し続けるつもりだ。

そんなにこのＯＰを愛しているのなら、オリジナルの絵コンテと庵野がアニメーターに渡したラフスケッチを観るといい.. めっちゃ笑えるし、面白いよ
https://www.youtube.com/watch?v=4IZH4FyxMYM

>>ミサトは少し思いやりに欠けるように見えるかもしれないけど、オレにはシンジのことを他の誰よりも心配しているように思えるよ

正直に言って、現段階のミサトはまだそんなに多くのコンペティションは抱えていない
ーーHere if you love it have fun with the original storyboards and rough scetches Anno made and gave to the animators..Its very funny and interesting
She really doesnt have that much of a competition at this stage tbh




15,海外の反応
とても興味深い動画だったよ！すごくクールだった、教えてくれてありがとう。
ーーThat was a very interesting video! Really cool stuff, thanks for that.








相田ケンスケ「いたたたた・・・」

鈴原トウジ「・・・ふっ」
相田ケンスケ「へへ」

碇シンジ「どうして、ここが？」
相田ケンスケ「勘って奴だよ。ここんとこ、何十人って同級生を見送ってきたんだ」

鈴原トウジ「碇がおらんようになったら、いずれワシらもこの街から出て行かんならんようなるやろ」

鈴原トウジ「せやけど、ワシら何も言われへん。ＥＶＡの中で苦しんでる碇の姿、見てるからなあ。碇のことごちゃごちゃ抜かす奴がおってみい」

鈴原トウジ「ワシがパチキかましたる！」




16,海外の反応
再視聴

エヴァンゲリオンは冒頭からかなり内観的な描写が多い作品だけど、今回はそれが全く砕かれ分割され(break up)なかった最初のエピソードと言えるだろう。一部の人はこの回を以前よりあっさりしたエピソードだと感じるかもしれないが、私はそうは思わない。私がエヴァンゲリオンで最も気に入っている部分は、キャラクターの掘り下げ方と、視聴者にシリーズの様々なポイントで、彼らの頭の中を読み取らせるというやり方だ。アニメは視聴者にインスタントな満足感を与え、視聴者の頭に大量の情報を詰め込むことだけに終始することがよくあるため、こうやって時折、キャラクターの視点に立って物事を見る時間を与えてくれるのはとてもありがたい。

相変わらずエヴァという作品は、多くを語らない傾向にある。あのミサトの叱責は多かれ少なかれここから立ち去れという意味に解釈できたため、シンジはそうすることを余儀なくされた。ミサトはシンジを突き放していたので彼が家出したことに気付いた時、出て行ってから何日経っていたのかも定かではない。シンジはミサトにこっぴどく叱られた次の日に家を出て行った可能性もあるが、だとしても、家出に気付いたのたった５日後だ。その間、シンジは具体的に反抗する方法も思い付かず、ただ街をさまよい歩いているだけだった。彼が本当に街を離れたいなら電車に乗ることもできたはずだが、彼はただ街を一周する環状線に乗るだけに甘んじていた。彼は離別するのに必要な信念と勇気を持ち合わせていなかったので、あの逃避行も所詮幻想にすぎないものだ。

そして、彼は、街の中にも自分にしっくりくる居場所を見つけることができなかった。彼はただ打ちひしがれ、いつものようにイヤホンで自らを外界から隔絶し、track25とtrack26を延々と繰り返しつづけた、決して前に進むことも、終着点に辿り着くこともできずに。彼は映画館に行ったが、観ている映画よりも、ほとんど空っぽの館内でいちゃつくカップルのほうが気になったようだ。他者と繋がっているという人間の状態は彼を魅了するが、しかし、彼には一体どうすればそうなれるのかがさっぱり分からない。人間とは彼にとって積極的に繋がろうとする対象ではなく、遠くから観察するものだ。大都市であるはずのここ第３新東京市でさえも、なぜかとても空虚に感じてしまう。シンジにとってはかなり人は多いはずだ、しかし人混みはまばらで、電車もいつものように混雑していない、そして街の通りは色と光で満たされているのに、どこか人の気配がない。そして、彼は郊外の緑地へと追いやられるように逃げ込んだ。

NERVの大部分の人間は淡々とした態度だった。保安諜報部がシンジを見つけ出すことを知っていたからか、それとも、彼らにとってシンジは単なる使い捨ての道具に過ぎないからか、いずれにせよパイロットが人として扱われていないのは明白だ。彼らはパイロットとして子供たちを利用する他ないため、子供たちの人間性はある程度無視せざるを得ないのかもしれない。それが大人たちが彼らを道具として扱うことへの罪悪感に対処できる唯一の方法だ。そして再び、ミサトは、シンジはもうここから離れたほうが良いのかもしれないと憂慮し、初号機のデータはレイに書き換えられようとしていた、彼女は人間よりも代替可能な存在と見做されて。少なくともミサトはシンジのことを心配している様子だったが、しかし、自分の体面を気にしてもいた。彼女はシンジを追い払う役回りを最小限にしか担わず、ケンスケとトウジには嘘をつき、彼を探し出して関係を修復することにあまり注力しないことを合理化している。シンジはミサトを拒否し、彼女の目にはそれが終わりに映った。

第３新東京市周辺の野原で、シンジは初めて友達と呼べる人間であるケンスケと出会った。ケンスケは、シンジと同じく母親を亡くしており、ミリタリーとエヴァに夢中になっている少年で、刺激を求めて兵士ごっこをしたりしていた。それは無知故に出てきた考えかもしれないが、少なくとも彼はシンジに戦う能力があることを褒め称えた。ケンスケは自分の持っている玩具や知識が実際の戦闘では何の役にも立たないことを知っていた。それでは、NERVの保安部にシンジが黙って連れ戻されることに抵抗することもできない。シンジが知っているのは他人のために、他人が望むもののために物事に取り組むことだけだ。第３話でリツコが言っていたように、それが彼の処世術である。彼は自分はエヴァのパイロットには向いていないと言ったが、しかし、自分の周囲の人間のためならやるつもりがあるらしい、ミサトはこれに激怒し、彼が自分の意志について話さないことを厳しく叱責した。

「自分の周りの人を守るためにやりたい」というのと「このポジションに他の人間を座らせるわけにいかないから仕方なくやる」というのは大きな違いだ。後者には自分を哀れんでほしいという欲求が感じられ、それがミサトを激怒させた。彼は自分自身を理由を付けて斡旋しようとしているが、シンジは他人が自身に望んでいる人物になろうと意識している。彼は自分のために何もしようとしていない。そうなりたいという明確なビジョンも持たず、ただ他人からの期待に応えようと自分を作り上げているだけだ。彼がとても従順なのは、それが他者に自分を気に掛けてもらう方法だと思っているからだ。「来い」「乗れ」「去れ」彼はロボットになんて乗りたくはなかったが、しかし、今となってはそれだけが彼の役割なので、彼はそれに適応しようとしている。表面上は、彼はそう思われているヒーローになろうとしているが、自分でも言っている通り、それは自然に湧いてきた欲求ではない。ミサトが言うように、彼はこの受動性に殺されることになるだろう。なぜなら、彼は全く自己を持っておらず、自己防衛の感覚もないからだ。

このミサトとシンジの間隙が、ハリネズミのジレンマの最初の実例だ。この２人は感情で結びついているので、お互いがどうやって結びついているのか、相手が何を求めているのかをまったく理解していない。シンジの示す欽慕が主張型のミサトをイライラさせ、ミサトの怒りがシンジを追い払う。肝要なのは、お互いに丁度良い距離を保ち、それぞれが生きる場所を見つけようとすることだ。第３話でヒーローを歓迎したクラスメイトたちとの浅い関係は、あの駅にはなかった。そこに来たのはシンジのことを応援するトウジとケンスケだった、たとえその関係が、トウジの妹やケンスケの嫉妬という心から始まったものだったとしても。トウジの頬に伝わった痛みは、本当の友達の基礎となった。同じように、ミサトとシンジはお互いを傷つけあったが、その痛みを通してお互いの気持ちを理解しあうことができた。それは彼が留まりたかった理由であり、彼女が彼を連れ戻そうとした理由だ。
ーーRewatcher







註：introspective =「内省的」, gratification =「満足させること、喜ばせること、満足すること」,  alongside =「そばに、並んで、並列して」, scolding =「叱責する、がみがみ言う、小言をいう」, chewed out =「こっぴどく叱る、叱り飛ばす」, content to =「～して満足する、～に甘んじている」, engage with =「噛み合う、ぴったりはまる、関与する」, sparse =「まばらな、希薄な」, flee =「逃げる、逃れる、避難する」, in stride =「うまくこなす、楽々と処理する、柳に風と受け流す」, dehumanization =「人間性抹殺、非人間化」, interchangeable =「交換可能、置き換えできる」, save face =「顔を立てる、体面を保つ、面子を保つ」, passivity =「受動性、無抵抗、消極性」, self-preservation =「自己保存、自衛本能、自己防衛」, deference =「欽慕、敬意、尊敬」, assertive =「断定的な、言い張る、主張型」